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エルダーフラワーの咲く コッツウォルズを旅して

2019.10.23 TEXT by Tomoko Hirakawa

イギリスを象徴するハーブ、「エルダーフラワー」。人々に愛され、「英国の知恵」ともいえる伝統飲料「ハーブコーディアル」として飲み続けられてきました。
その歴史とライフスタイルとして英国に息づく魅力を探るためイギリス・コッツウォルズを訪れました。

田園風景の中で暮らす“オーガニック”ライフ

ロンドンから車を3時間ほど走らせると、ハチミツ色をした石造りの建物、ハーブや色とりどりの花が咲くイングリッシュガーデンなど、のどかな田園風景が広がるコッツウォルズに到着します。ここに暮らすライアンさん一家は、豊かな自然の中で、オーガニック料理をふるまうカフェなどを営んでいます。

彼にとって、“オーガニック”とは、認証を指すのではなく、例えば地元の食材や、放し飼いの鶏の卵など、自然由来の食材を取り入れたり、自然と共に心地よく暮らすことだと言います。

甘い香りが漂う6月のコッツウォルズ

エルダーフラワーが満開になると、家族で収穫するのが恒例行事。
香りや色を確かめながら家族総出で摘み取り。

5月を過ぎると、イギリスのあちこちでクリーム色の小花が咲き、甘い香りを漂わせ始めます。
それが、「エルダーフラワー」です。イギリスでは暮らしに欠かせないハーブとして、大切にされています。

この時期は、比較的天候に恵まれ、青空とエルダーフラワーの色のコントラストが美しく、清々しい風景を楽しめます。ライアンさん一家がもつ4エーカーの広大なエルダーフラワーガーデンの花々も6月には満開に。収穫した花は、「ハーブコーディアル」の材料に使われます。

子どもと触れ合いながら楽しい料理の時間を

「ハーブコーディアルの作り方は家庭によって違うのよ」と教えてくれたのは、笑顔が素敵な奥様、ナヨミさん。ナヨミさんとお友達のべスさん、息子ビリー君と3人で仲良く収穫したてのエルダーフラワーでハーブコーディアルを手作りします。

エルダーフラワーがつなぐ家族や友人の絆

ハーブコーディアルが完成すると、家族や友人を集めてティーパーティーが始まります。
テーブルには、エルダーフラワーを使ったスコーンなどスイーツが並びます。
「エルダーフラワーはイギリスでは欠かせないハーブです。家のエントランスには、エルダーの大木があり、家族を守ってくれる大切な存在です。両親から受け継いできたエルダーフラワーコーディアルやイギリスの伝統については子どもたちに受け継いでいきたいと思います。」とライアンさん。エルダーフラワーが結ぶ家族の絆を感じた、心温まるティーパーティーでした。

コッツウォルズの魅力ガイド

歴史や伝統を感じる街並みが残る魅力あるスポットを紹介します。

  1. Borton-on-the-Water(ボートンオンザウォーター)
    人口4千人程度の小さな町。その水辺の美しさは、コッツウォルズのベニスと呼ばれるほど。
  2. Bibury(バイブリー)
    ウィリアム・モリスに、イングランドで最も美しい村と称された町。
    ハチミツ色の家々と美しい花々が続き、まるで時間が止まったようなイギリスの古き良き風景を堪能できます。

ロンドン王室にも漂うエルダーの甘い香りを訪ねる

<クレア・プタックさんが営むヴァイオレット・ケイクにて>

2018年春に行われた、ハリー王子とメーガン妃のロイヤルウェディング。
2人の門出に花を添えたのは、クレアさんが手がけたエルダーフラワーウェディングケーキです。
繊細な花を使いオーガニックケーキを作るパティシエでジェイミー・オリバーのお気に入りとして知られる彼女は、5日がかりでケーキを手掛けます。このケーキは、エルダーフラワーコーディアルとレモンなどをふんだんに使い、伝統を重んじながらも新しさを加え、絶妙なバランスの甘さに仕上げたもの。
アメリカ人のクレアさんにとって、イギリスの花と言えば、エルダーフラワー。
この世のものとは思えない芳しい香りはウェディングケーキにぴったりの特別な花として使ったそうです。

ナチュラルな空気感が漂うクレアさんのお店へ

  1. クレアさんの評判を聞きつけお店は満員。平日にも関わらず早々にエルダーフラワーケーキは売り切れ。
    Violet cakes(ヴァイオレット・ケイク)住所:47 Wilton Way,E8 3ED,London 営業時間:月~金8:00~18:00、土・日9:30~18:00
  2. シンプルながらもかわいらしい雰囲気のケーキは、クレアさんのこだわりの素材、アマルフィ産レモンを始めとしたオーガニックなものを使用。
  3. カフェに飾られていたのは、オーガニックの潮流を築いた第一人者、アリス・ウォータースさんが営むレストラン「Chez Panisse(シェパニーズ)」メンバーのサイン。
    クレアさんは、ここでパティシエとして修業を積み、イーストロンドンに移住したそう。

イギリスで感じるオーガニック料理の潮流

引用:From A Modern Way to Eat by Anna Jones. The photographer is : Brian Ferry

クレアさんとも親しい料理家やライターとして活用するアンナ・ジョーンズさんとも今回の取材を通して出会いました。クレアさん同様アンナさんもエルダーフラワーを使ったレシピを紹介してくれました。

この旅で出会ったライアンさん一家、クレアさん、アンナさんすべてに共通するのは、イギリスとの伝統飲料「エルダーフラワーハーブコーディアル」や自然で良いものを取り入れるオーガニックなライフスタイル。彼らから学んだオーガニックな暮らしを自分でも取り入れていきたいと感じた旅でした。

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