6月、花々やハーブの咲き乱れる最も美しい季節、英国・コッツウォルズ地方を訪ねました。絵のような景観の中には、母から娘へと語り継ぐ伝統を大切にし、日々の暮らしを楽しむ人々の生活があります。導いてくれたのは、今が盛りのエルダーの花。今日の英国に根づくハーブある暮らし再発見の旅です。
暮らしに役立つ植物
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まだ日本ではハーブを知る人も少ない頃、私を惹きつけたのが未知なる「コーディアル」です。「花で作るシロップ」とは何て魅惑的でしょう。時を経て、ロンドンの古書店で見つけた1冊の本に再び私は釘付けになります。それはエルダーをはじめ、さまざまな様々なハーブや果物を使って作る、主婦のためのワインとコーディアルの本でした。特別のことではなく、季節ごとの、主婦のごくあたりまえの嗜みのように綴られていました。こんなにもハーブが日常だなんて!ハーブを愛でる英国人の暮らしを垣間見るような気がしました。
イギリスでの使われ方
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6月になると街中にあふれるマスカットの香り。その花はシロップやワイン、各家庭でさまざまに工夫して楽しまれてきました。コーディアルとはシロップのこと。ハーブやベリーを収穫し、煮つめた砂糖水に漬け込んで作るコーディアルは、英国人にとって懐かしい家庭の味です。ラズベリーやカシスなどの果実、ジンジャー、シナモンなどのスパイスも使われます。エルダーの果実(ベリー)で作るワインはビタミンとミネラルを豊富に含み、ブドウのワインより栄養価に優れるといわれます。
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Elder
[エルダー]Sambucus nigra
レンプクソウ科(スイカズラ科) 落葉性低木
和名:西洋ニワトコ
エルダーは花、葉、果実、樹皮とすべてが有用な植物で、ヨーロッパ全域に分布する最も身近なハーブのひとつ。英国以外にもドイツ、オーストリア、スウェーデンといった北欧系の国々で特に親しまれているようです。ドイツ語名はホルンダー。 エルダーは名作にも登場します。エルダーに宿る女神の話です。世界中の多くの文化圏で、人は樹木と深い関係を持ち、信仰してきました。エルダーもそんな聖なる木のひとつです。
キャサリンおばさんのエルダーフラワークッキング
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木漏れ日の美しい昼下がり、キャサリンおばさんにエルダーフラワー料理を教えていただきました。 花の収穫はやはり早朝、香りが揮発しないうちがよいといいます。パラソル形に広がった花の部分だけを指先で手折ります。花摘みは本当に幸せな気分。カゴいっぱい摘んで、いよいよクッキング。
- 満開のエルダーの花ひとつかみ(約50g)を、1Lサイズの計量カップに入れます。
- 沸かしたての熱湯を500ml注ぎ、5分置きエルダーフラワーを漉します。
- オーガニックシュガー約100g、レモン3個分の果汁を加え、さらに氷、水を加えて1Lにします。
- コーディアルドリンクの完成! このコーディアルは薄めず、そのまま飲めるレシピです。
昼下がりのエルダーフラワーパーティー
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お砂糖をまぶした揚げ菓子、フリッター。身近な材料を使ってあっという間に出来上がる、家庭ならではの手作りのおやつです。
エルダーフラワーのコーディアルを使ったドリンクはイギリスの各家庭でも親しまれています。炭酸で割ったりお酒で割ったり、好みにあわせてアレンジできます。
今日の主役はエルダーフラワー。ちょうどロンドンの学校に通うお孫さん達も集まり、お庭にテーブルを出し、素朴でアットホームなガーデンパーティーが始まりました。
コッツウォルズを旅する
ロンドンから西へ200キロ、そこにはコッツウォルズとよばれる美しい丘陵地帯が広がります。
中世の面影を残す絵のような田園風景は、訪れる人々の心を癒し、郷愁を誘います。単に街並みを守るに留まらず、私はそこに「原風景を守る」英国人の意志、魂を強く感じました。
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