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世界のパートナーファーム Herb Travel 佐々木 薫ハーブ紀行

黄金のホホバ油を求めて イスラエルの旅

2017.10.25 TEXT by Kaoru Sasaki

アロマテラピーには欠かせないホホバオイル。 砂漠の黄金油とよばれるホホバを求め、イスラエルの地を訪ねました。
ここは死海。私のイスラエルの旅はこの幻想的な風景から 始まりました。 その名の通り、一切の植物、一切の生物が生育できない湖です。
結晶化した塩の岩、限りなく透明に澄んだ水、極めて神秘的、まさに人の世を逸する美しさです。 「天地創造」の逸話を生んだこの地は、今なお、大地と共に生きようと する人々のエネルギーで満ちあふれていました。

"塩の海 " 死海

死海は古代イスラエル人たちにとっても不思議な存在でした。神の力が支配する地域と考えられ、旧約聖書にも登場します。近年、この付近で紀元前1世紀のヘブライ語写本が発見され、20 世紀最大の考古学的発見として注目されています。塩が自然に結晶化し、雪のようにも珊瑚礁のようにも見えます。
水に入ると少しぬるっとして肌にまとわりつく、まるで油のようなのにべとつかず、水から上がると肌はしっとり、とても不思議な感触です。

湖水につかったり、 湖底の泥を体に塗り日光浴する 「死海療法」。浮力が大きく、水に入ればプカプカと浮かびます。

死海は大地の裂け目「アフリカ大地溝帯」の北端に位置し、海面下400メートル、世界で最も低い地点。ヨルダン川の水が流れ込みますが、水の出口がなく、たまった水は強い太陽の日差しによる蒸発のみで水面が保たれています。
結果、水中の塩分が濃縮され、高濃度の塩の海となります。塩分濃度は約25~30%。(通常の海水は3%)通常の海水をはるかに超えるミネラルが豊富に含まれています。(カルシウム約70倍、カリウム10倍、マグネシウム60倍。)

砂漠を緑化する イスラエルのホホバ

「砂漠と共に生きる」イスラエルでは砂漠と闘わず、一緒に仕事をする発想で、太陽熱、土壌、IT 技術を駆使し、大規模農場、有機農法が開発されています。ホホバの栽培もそのひとつ。独特な高精度の灌漑技術が採用され、砂漠の緑化に貢献しています。イスラエル南部、ネゲブ砂漠に行きホホバの畑を訪ねました。

オーガニックホホバの畑

畑を案内してくれたナタン氏
雄木の枝いっぱいのホホバの実
落ちた実を掃き集めるほうきマシン
集まった実を拾い集めるコレクター

野生の状態での樹高は60~90cm程度ですが、プランテーションでは3~5mに成長します。現在では野生植物から栽培植物に変貌を遂げ、イスラエルのすぐれた灌漑技術の成果により世界一の生産量を上げています。
収穫は9月中旬から10月末、雨期が始まるまでにすべて収穫します。作業はすべて大型の機械による大規模農法。
ホホバは雌雄異株ですが畑の雄木の割合は約3%。すべて風媒受粉です。ナタン氏の畑は7、8種の品種を植え、気候の変動などによる収穫リスクに備えています。動物が嫌う成分が含まれるためか、小動物や害虫の被害もないそうです。

JOJOBA
[ホホバ] 学名:Simmondsia chinensis

ツゲ科 常緑性低潅木 雌雄異株

アメリカ合衆国、アリゾナ州からカリフォルニア州、メキシコにかかるソノラ砂漠周辺に自生する潅木で、その種子の油は北米先住民に「金の液体」と呼ばれ珍重されてきました。
葉にも微量なワックス成分を含み、水分の蒸散を防ぎ、細菌や害虫、汚染物質から自らを保護し、苛酷な砂漠の環境からホホバを守っています。
種子には50%以上のワックス成分、ビタミンEを豊富に含み、保存性に優れます。ムラなく肌にさらりと伸び、すみやかに皮膚に浸透、健康的で絹のような光沢が残り、スキンケアやヘアケアにとても使いやすいオイル。
搾ったままの未精製(ゴールデン)と色と香りを精製した精製(クリア)のオイルがあります(写真は前者)。

ホホバを搾る

  1. ホホバの種子に熱風を与え乾燥させます。
  2. クラッシャーで粗く砕い た種子を圧搾機にかけ (1 番搾り)、搾りカスを さらにもう一度搾り(2 番搾り)ます。
  3. 搾ったオイルはフィルタ ーに通し、不純物を除去します。すべての工程において化学薬品はいっさい使われていません。
  4. ホホバの種子から搾るオイルは、「オイル」と呼ばれますが、他の植物油のような油脂ではなく、液体性のワックスです。
    輝く金色の液体は、まさにゴールデン・オイル。

聖書の地・エルサレム オリーブと香油

ユダヤ教徒の聖地「嘆きの壁」
ゲッセマネの園のオリーブ
イエスの体に香油を塗ったという場所の壁画。香油の壷が描かれている。
マグダラのマリア教会。
彼女の絵画には必ずというほど香油壺が傍らに描かれる。

エルサレムの東、オリーブ山の麓にあるゲッセマネの園には、樹齢数千年といわれる8本のオリーブの木があります。ここはイエスが弟子たちとひんぱんに訪れ、祈りを捧げていた場所で、最後の晩餐の後、捕らわれた場所でもあります。
「ゲッセマネ」とは「油搾り」の意味。かつてこの辺りは一面オリーブの林で、ここで油が搾られていたそう。オリーブは古代イスラエルの重要な農産物であり、果実から搾る油は、食用、燃料、化粧、医薬品として、宗教儀式にも使われてきました。

聖地イスラエルの生活とハーブ

聖書時代の自然や生活様式を人々に伝える目的で作られた自然公園「ネオット・ケドゥミーム」
古代式のオリーブオイル搾り
聖書時代の料理体験
スコットに重要なハーブ「ナツメヤシ」

聖書に書かれる植物のほとんどが有用植物、ハーブです。聖書は壮大な物語で構成されますが、その考えを広く民衆に伝えるため、難しい言葉ではなく、生きた人間のやりとり、身近にある植物のたとえが多く使われました。聖書を開くと、古代より人間の生活に植物が密着し、今なおハーブとして私たちの生活の中にあることを、あらためて思い知らされます。
ハーブは、秋に祝う 「仮庵(かりいお)の祭り(スコット)」などのユダヤ教の祭事にも大事な役割をしています。エトログ、ナツメヤシの若葉、マートル、ヤナギの4つのハーブを束ね神に捧げ、4つのタイプを束ね統合することで、補完しあい、よい国となるとたとえられています。

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