日本は、国土(3,779万ha)の約7割を森林が占める世界有数の「森林大国」です。
植物による光合成が、生物が生きていくための環境を提供し、人類にとっての生存圏は森林のある地域に集まり、森は人が生きていくための生存条件でもあります。
「森に行くといい気分になる」誰もが感じたことのある森林浴効果だと思いますが、その秘密は香りにあります。森のアロマの代表「モミ精油」の産地、北海道下川町を訪ねました。
針葉樹や広葉樹などさまざまな木々が生える自然林。ひとりで歩けば、小鳥や草花、木々、小さな生き物たちとのお喋りが始まり、みんなで歩けば、黙っていても笑顔になり、旧知の仲間だったような感覚になります。森には人と空気を浄化する力がある、そんなことを自然と感じます。
Momi
[モミ]
学名:Abies sachalinensis
マツ科
モミ精油の原料植物であるトドマツは「マツ」とつきますが、クロマツやアカマツのようなマツ属Pinusではなく、モミ属Abiesに分類されます。トドマツの学名の種小名は、サハリン(樺太)に由来し、北海道、千島列島南部、サハリン、カムチャッカ半島の針広混交林から亜寒帯林にかけて分布します。
精油の芳香成分は、樟脳を思わすツンとしたカンファー調の香りカンフェン、針葉樹の特徴的な香りα、β-ピネン、穏やかなシトラス調の香りリモネンなどで構成され、もっとも森林らしさを表す香りと評価されます。
酢酸ボルニルにはマツ科に共通する成分ですが、安眠効果などが報告されています。その他0.1%に満たないような微量成分を多様に含み、深い森を散策するような神秘的な香りです。
森と暮らす下川町
北海道北部に位置する下川町は、東京都23区とほぼ同じぐらいの面積に、約3,500人が暮らす町で、冬は零下30℃になる極寒の地です。小麦やトマトなどの広大な畑や牧場、それを抱えるように、トドマツ、カラマツ、シラカバなどの深々とした森がひろがります。
1960年から伐採と植栽が繰り返しの利く循環型の森林経営に取り組み、林業を主要産業とし、2001年、適切に管理された森に与えられる国際認証FSCを道内で初めて取得しました。
木材としての活用だけでなく、間伐材などを燃料として利用する木質バイオマスエネルギー、環境教育、森林浴などの健康への活用、木材加工時の廃棄物をゼロに近づける試み(ゼロ・エミッション)等々、森林を中心に多様な取り組みをしています。モミ精油の製造事業もその一端を担っています。
トドマツからモミ精油へ
北の大地をおおうトドマツは、遥か昔から、人や動物たちの生活の中で、大事な存在としてあがめられてきました。樹脂を塗り薬にしたり、まよけにもされました。
モミ(トドマツ)精油の香りに、人と森の樹木、自然とのつながりを深く感じます。