バランスのいい栄養価で世界的に注目されている「キヌア」。原産地のひとつである南米ペルーではどのように生活に 取り入れられているかを確かめてきました。
アンデス山脈の高原に広がるキヌア畑へ
首都リマから飛行機で2時間ほどの場所にあるフリアカ。標高は、富士山の頂上と同じ約3,800m。体を突き刺さすような寒さに加え、空気が薄く、とても過酷な環境でした。フリアカの街を抜け、1時間ほどの場所に、キヌアの農場がありました。
しかし、私が訪れた6月中旬は収穫が終わりかけのころで、一面に広がるキヌア畑を見ることができませんでした。耕作は、2年間栽培し、1年間オート麦、その後2~3年休耕するサイクルで行っています。高地での栽培には、土に栄養分を蓄える期間が数年必要になるそう。キヌアは10~11月に種をまき、4~5月に収穫されます。
過酷な環境下でも豊富な栄養を蓄えるキヌア
キヌアには、黄色以外にもレッドキヌアや、ブラックキヌアなどもあります。色による栄養価の違いはほとんどありませんが、レッドやブラックキヌアのほうが食物繊維やたんぱく質が若干多いといいます。収穫した穂を手で擦るとゴマ粒より少し大きな種が手のひらに残ります。キアヌ以外にも、欧米で人気急上昇のスーパーフード「カニワ」が収穫されています。
農場にはアルパカやヒツジも。寒い高地に街があるため、アルパカやヒツジの毛で編んだペルーニットが欠かせません。
Quinoa
[キヌア]Chenopodium quinoa
ヒユ科
数千年前から現地の食文化を支えてきた。バランスのとれた栄養価や調理のしやすさなど、総合的に優れた食材として、NASA(アメリカ航空宇宙局)にも注目されている。低カロリーで低GI、豊富な食物繊維、鉄などが特長。
キヌアの栄養価(キヌア100g当たり)
- 熱量:345kcal
- 食物繊維:8.4g
- 鉄:3.3mg
- マグネシウム:182mg
- ビタミンB1:0.46mg 他
- 必須アミノ酸合計:3.42g
分析機関/(財)日本食品分析センター、(財)食品分析開発センターSUNATEC
キヌアの家庭料理を探しにチチカカ湖に浮かぶ葦の島へ
フリアカから車で約1時間かけ、観光地として有名なチチカカ湖へ。ペルーとボリビアの国境にまたがるこの湖は、兵庫県ほどの大きさ。その湖には、ウロス島と呼ばれるトトラ(葦)で作られた人工の浮島があり、世界中から多くの観光客が訪れます。
湖畔の街、プーノから観光船で約15分。足を踏み入れると、湖の上に浮いているとは思えないほどしっかりした土地で、島全体が町として整備されています。住居にはテレビなどの電化製品が揃い、陸上とほとんど変らぬ生活スタイルでした。
調理のしやすさも魅力のひとつ
島の小さなレストランで、キヌアとチキンのスープの作り方を教えてもらいました。水洗いしたキヌアとニンジン、ジャガイモを煮て、全体に火が通ったら鶏肉を入れます。最後に塩こしょうで味付けをするだけのシンプルレシピ。スープを作りながら、ペルーの伝統的なキヌア粉入りの揚げパンも試食。とても素朴な味で、つい食べ過ぎてしまいました。
キヌアは意外にも、サラダや白米に混ぜて食べられているそう。「味にクセがなく、調理もしやすい。」と調理する方も太鼓判を押していました。高山病を和らげるお茶もいただきました。
ペルーの食卓に欠かせない「キヌア」
ウロス島を後にし、首都リマとチチカカ湖の畔にあるプーノを訪れました。プーノの市場では、キヌアの量り売りがされており、リマのスーパーでは、キヌアのインスタント食品が並び、デリコーナーにもキヌアを発見。サラダやサンドイッチなどさまざまな料理が楽しめるキヌア料理専門店もあり、店内は若い女性で賑わっていました。海外セレブが食生活にキヌアを取り入れるなど、おしゃれで身体にいい食材として、現地でもその価値が再認識されているようでした。
プーノの市場では、アマランサスやカニワなど多くのスーパーフードにも出会いました。どれも数千年前からアンデス地域に根付く食材で、スーパーフード発祥の地といっても過言ではないでしょう。
旅の終わりに
朝5時に目が覚め、湖畔でまだ暗いチチカカ湖を眺めていました。やがて水平線の向こうからゆっくり太陽が昇り、朝日が水面に反射し、幻想的な景色は美しく、綺麗でした。美しい自然に見惚れながら、遠く、長い旅路をなごり惜しく思いました。今回訪れたフリアカ地域は、富士山の頂上とほとんど変わらない厳しい環境。そこでたくましく育ったペルーのスーパーフードは、たくさんの栄養を含んでいます。
キヌアのように、白米に混ぜたり、サラダやスープに加えて食べられる、親しみやすい"スーパーフード"を取り入れた生活をこれからも続けていきたいと思います。