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心の迷子、脳のモヤモヤに
「マインドフルネス」

2022.04.01
あらゆる情報に囲まれた社会の中で、心や脳が息切れしていませんか。
現代社会を生きる心の在り方について、精神科医・心療内科医、林香寺住職の川野泰周先生にお話を伺いました。

あなたの心、迷子になっていませんか?

情報過多の現代を生きる私たちの脳は、常にマルチタスク。
たくさんの情報で、脳の神経回路が悩んだり、迷ったりしているときに見られる、
「デフォルト・モード・ネットワーク」が亢進した状態が多くなっています。
この機能は、私たちの脳で使うことのできるエネルギーの6割以上を消費していることがわかっており、
放っておくと「脳疲労」に陥ってしまう可能性も指摘されています。

海外の調査によると私たち現代人は、
起きて活動している時間の50%近くを、「マインドワンダリング」な状態、
つまりは、心ここにあらず、心がさまよったままで過ごしており、
「デフォルト・モード・ネットワーク」が過活動になっている時間が多いと推定されます。

心の迷子、脳のモヤモヤといったマインドレスな状態は、健やかであるとは言えません。
こうした状態を変えるには、意図的に穏やかでマインドフルな心の状態、「マインドフルネス」を実践することが大切です。
「マインドフルネス」は、決して難しいことではなく、いつでも、どこでも、その瞬間自らで作り出すことができるのです。

「マインドフルネス」とは

今、この瞬間にある目前にあることをありのままに受け入れ、細やかに観察し、気づくこと。
これが「マインドフルネス」です。

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マインドフルネス=瞑想と思われている方も少なくないのですが、瞑想はマインドフルネス実践方法のひとつ。
マインドフルネスは、今している自分の呼吸に意識を向けるなど、とても手軽にできる実践方法も少なくありません。

いつでもどこでも実践できるマインドフルネスをご紹介します。

やってみよう!「マインドフルネス」

仕事の合間に、通勤途中に、家事の最中でも、今、この瞬間に注意を向けることで、マインドフルネスは実践できます。
今回は、3つのメソッドをご紹介します。

1.精油(アロマオイル)などの香りを嗅ぐ

香りに意識を向けることで、その瞬間、香りと自分だけの世界が生まれ、マインドフルな状態をつくることができます。
午前中には、レモン、グレープフルーツやベルガモットなどの柑橘系、
夕方以降には、ラベンダーやイランイランなど落ち着くアロマがおすすめ。

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精油だけでなく、コーヒーやハーブティーの香りも〇。湯気と共に立ち昇る香りを嗅ぎながら、
じっくりとその一杯を味わうことで、心のざわめきが整うのを感じてみて。

2.呼吸を観察する(呼吸瞑想)

呼吸に意識を向けるだけの手軽な方法です。
楽に座って、自然な呼吸によって体がふくらんだり、しぼんだりするのに注意を向けるのが基本的な方法。
もっとリラックスして行いたい場合は、横になり、おなかにぬいぐるみをのせる方法もおすすめ。
そのまま、ぬいぐるみが上下するのを見ると、自然と呼吸を意識し、マインドフルに。
このとき、ヒバやヒノキのアロマを取り入れるのも〇。

3.マインドフルイーティング

食べるという行為を五感をフル活用して丁寧に行うことで、感覚が研ぎ澄まされます。
少量でも満足感が得られ、自然と感謝の気持ちが湧くように。
最初に目の前に用意した食べ物をよく見て観察し、次にゆっくりと香りを嗅いでから口に入れます。
あとは、そっと目を閉じて、食べることに集中します。このとき、歯ざわりや舌触り、香りなどを感じます。
ナッツやレーズンなどがよく用いられますが、普段の食事の一口をこの方法でいただいたり、
チョコレートやクッキーなどのお菓子で実践してもOK。

マインドフルネスはレジリエンスの向上にも

「レジリエンス」とは、うまくいかないことなどがあっても、折れたりくじげたりせず、それをバネにして、
竹や笹のようにしなやかに柔軟に復元することができる心の力のこと。

マインドフルネスを日々行うことで、レジリエンスを高めることができ、たとえ他人からの良くない評価や、
間違いに対する指摘を受けても、ネガティブな感情に飲み込まれず、あるがままを受け入れられるようになるでしょう。

燃え尽きにも、トゲトゲの心にも、幸せのカギは「マインドフルネス」

情報過多であるうえに、医療や介護に従事している「ケアギバー」や、
社会生活に欠かすことのできない「エッセンシャルワーカー」の方々、
子育て中の親御さんたちは、他者のために尽くすあまり自らの心の声が置き去りにされ、
燃え尽きてしまいやすいことが指摘されています。

自分の心の声に気づくための、「心の感度」を上げるのにもマインドフルネスは役立ちます。

また、モヤモヤした苛立ちを抱えていると、他人に対して執着や嫉妬をしたり、
攻撃的な態度をとってしまうこともあるかもしれません。
そんなトゲトゲの心にもマインドフルネスは有効です。

「少欲知足(しょうよくちそく)」。
感謝の気持ちで心が満たされることで、今まで感じなかったことに気づくことができるようになるでしょう。

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自己表現がままならず、人生の充足感が得にくくなっている現代社会。ほんの少しでも構いません。
過去でも、未来でもなく、「今、この瞬間」を感じてください。

マインドフルネスは、今を生きる、幸せのヒントかもしれません。

Text by Tomoko Hirakawa

お話を伺ったのは...
【川野泰周(かわのたいしゅう)先生】
精神科・心療内科医、林香寺住職。
寺務の傍ら精神科医診療にあたる。様々な職種・年齢層に向けて、講演活動を行う。




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