職業、イラストレーター。
杉山巧さんは、雑誌、書籍装画、企業誌の表紙など紙媒体を仕事の中心にする他、CDのジャケット、企業のリブランディングにも携わるなど、仕事の範囲は幅広い。
杉山さんが絵を描き始めたのは、意外にも10代最後の年から。
絵を描くこと自体は好きだったが、絵の道で生きていくことなど思いもよらなかったそうです。
大学進学を希望するも、大学への道が閉ざされ、グラフィックデザイン系の専門学校に進学。
この頃、イラストレーターの先生が自由に描いた自分の作品を、 「勢いがあって強く色も形もとても良いイラスト」と褒めてくれたことがきっかけで、 杉山さんは絵を志すようになります。
初めての壁、自分にひたすら向き合う時間
「東京の雑誌で初めて絵の仕事をもらいましたが、クライアントが希望しているテーマの絵を描けず壁にぶつかりました。
その後も、3年くらい同じような状況が続き、出口のないトンネルをひたすら歩む辛い日々を送っていました。
ですが、このまま諦めてしまうのではなく、とことん絵に向き合って納得いくまでやり切ろうと考えました。」と杉山さんは話します。
ボール紙が私の絵筆
なかなか仕事がもらえない中、コンペで自らの作品ファイルを見ていただく機会に恵まれました。
そして、装丁家の鈴木さんからオファーを頂き、直木賞受賞作品「蜜蜂と遠雷」(恩田 陸著)の装画に抜擢。
「本を読んだことがある方はわかると思いますが、作品の中の主人公、風間仁の演奏風景をイメージして装画を描きました。」と杉山さん。
なかなかOKには至らなかったそうですが、何度も描き直しようやく現在の装画に。
「私は、ほとんど絵筆を使いません。ボール紙と言ったやや厚手の紙を適当な大きさに切り出し、その紙に絵の具をつけて、スタンプの要領で色を重ねながら描いていきます。私の知る限りではこの技法はかなり珍しいかと思います。」
きっと、この独特な画風が鈴木さんの目に留まったのだと思います。
絵を描くということ
杉山さんは、絵を描くのはその日のうちに終えるようにしているそう。
装画の書籍や絵の基となる素材を読んで(見て)、構想を考えてから絵に向かう。
絵に向き合う気持ちにならないときは、一度絵から離れて、音楽を聴いたり、散歩をして気分転換を図るのだとか。
そのうちに気持ちがのり、楽しくなってくると、何も考えずに、原始的に感覚に委ねて描けるように。
「今回、ハーブポーションの画を描かせていただきましたが、ハーブ素材をメインに、白、グリーン、ブルー系を配色して明るくまとめるようにしました。」
ハーブを愉しむ暮らし
「作品に向き合う時間の中で、ノンカフェインの飲み物が好きなので、ハーブティーを良く飲んでいます。」
その時々の気分に応じて、カモマイル、ローズヒップ、ごぼう茶、雑穀茶、びわの葉などを飲み分けているそうです。
「妻もスープやピクルスを作るときに、ハーブを材料にしています。
子どももまだ小さいですが、妻のハーブ料理が好きなようです。
どちらかと言うと、私よりも妻の方が自然志向。
スキンケアにアロマを取り入れたりしていて、身近な環境にハーブがあるので、気づいたら自分も好きになっていました。」と杉山さん。
杉山さんの画に向かい思い描く世界はハーブのエッセンスも含まれているのかもしれません。