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香りの色

2019.06.22 TEXT by Keiichiro Tsuda (Perfumer)


調香を学んでいた学生時代、友人と香りに見える色彩(印象)の話しになり、私が文字の色の話をしたところ、
「えっ!?もしかして津田君て共感覚持ってんじゃない?」と言われ、キョトンとしたことがあります。

幼いころから周期性のあるもの(曜日や12か月)や、「文字」や「記号」に必ず結びつく色や、景色が存在していて、
それが意識して決定づけたものでもなく、どのタイミングで結びついたのかはわからないものの、
みんな誰しも、ビジュアル(特に文字など)に対し、別物と結び付けが存在しているものだと思っていました。


それを"共感覚(synesthesia)"という特異体質だと知ったのは、結構最近になってからのこと。


例えば私の場合だと
「1」という文字は黒、「2」は濃いピンク色で、「3」がクリーム色。
「A」は黒、「B」は青~紺色、「C」黄色~黄緑で「D」が赤色、「E」も赤で、「F」は淡緑色。
「月曜日」は通っていた小学校の北側の道路が浮かび、「水曜日」は児童館、「木曜日」が幼馴染の子の家が営んでいた酒屋で、
「土曜日」はタイヤの遊具がいっぱいあった公園。(もちろん日、火、金にも存在します)
これは、子供のころ毎週水曜日に児童館に通っていたとかでもはなく、
今でも誰かと「じゃあ今度の水曜日ね!」と予定を立てたとしたら、"水曜日"を思い浮かべると、
必然的に最寄りの児童館の入り口の映像が頭の中に流れる、という仕組み。

一瞬何のことを言っているのやら...と思われる方も多いかもしれませんが、これが共感覚というもので、自分でもよくわかりません。
今でこそもう慣れているし、生活の中でその感覚をすごく意識することもないので困ることはありませんが、
幼いころは「2」という数字が黄色の文字色になっていたら、それはそれは認識が難しかったこと...
自分の中では「2」は濃いピンク色なわけだから、その黄色い「2」が全然自分の中に入ってこず、違和感でしかない。
2であって2じゃない、的な。


誰ともすり合わせが利かないその感覚が、非常に役立つようになったのは香りの仕事をはじめてからだと思います。
結構無意識に頭の中で置き換えているので、これを読んでくださっている方の中にも、もしかして私もそうかも、
と気づく人がいるかもしれません。そんな方はぜひ香りに限らず、何かの創作に挑戦してみてください。

香りにも色があって、温度もあって、キャラクターもあります。
表現の一つとして擬人化させたり、説明のために誇張しているわけではなく、
実際香りを嗅ぐと、まず色が浮かぶこと。それが香りを混ぜ合わせるときや、目的の香りをクリエーションする際に非常に役立ちます。

青っぽい色の香りは、同じ青系統で調色(調香)すれば、必然的に調和しやすいわけです。
色を作るのって楽しい。
もちろん想定していた色と違う香りになってしまうこともありますが、
結果それも楽しい。


 

「夏」、というか「Summer」という字面を思い浮かべると、私はピンク~茜色が浮かびます。
夏の一日の時間枠の中、ピンクから紅く染まる夕方が一番心地良くて、夏の醍醐味だと思っているからだと。
一番好きな晩夏の時間の色に置き換えているのかな?と、強引に解釈することにします。

ピンク色の空は、夏そのものを表しているかの如く、刹那で色っぽい。
暑い陽が落ちて、生き物たちが少しほっとして、虫の音色がサラウンド。
そこから始まる夜すら、まったく寂しげのない空気感。

ピンク色の香りの印象を持つ素材やテーマカラーとする香りは結構あります。他の色も同じく。


それぞれが放つ色彩を意識して捉えてみると楽しいですよ。

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