星々の動きから未来を占う西洋占星術は、4つのエレメントを通じて香りとも深い関係をもっています。
今回は、心理占星術研究家の鏡リュウジさんをゲストにお迎えし、アロマテラピーと占星術について伺いました。
津田:アロマテラピーと占星術は共通点があると鏡さんは仰っていました。
鏡:現代では、占星術と天文学が分かれていますが、16世紀頃までは同じ「星学」という学問でした。昔の人々は神が創造した完璧な天界と地上は密接に結びついていると信じていて、星の動きから地上の複雑な理を解明しようとしました。
この星学の基となったのが、古代ギリシアのエンペドクレスが提唱した、火、空気、水、土の4つのエレメント(元素)からなり、この世に存在するものはすべてこれらのエレメントの組み合わせによるというものです。
その後、アリストテレスによって4元素に関する基本性質(熱・冷・湿・乾)が示されました。この考え方に、星や人間の性質や性格をあてはめたものが4つのエレメント(火、風、水、地)です。
火:(星座)牡羊座、獅子座、射手座
(元素)火
(基本性格)物事に固執せず、人生を楽しむ楽天家。誰とでも気軽に打ち解ける。暴走すると時に利己的になることも。
地:(星座)牡牛座、乙女座、山羊座
(元素)土
(基本性格)物思いにふけることが多い勉強家。孤独を恐れず、決めたことは追及し続ける。頑固な一面も。
風:(星座)双子座、天秤座、水瓶座
(元素)空気
(基本性格)熱しやすく冷めやすい、フレキシブルな性格。新しいことに拒否反応を起こすより好奇心が勝るタイプ。
水:(星座)蟹座、蠍座、魚座
(元素)水
(基本性格)穏やかで静かな性格。内気で家庭的な人情派。周りのからの影響も受けやすい性質。勘が鋭い。
当時、病気は体液のバランスが崩れて起きると考えていました。この体液も天界の影響を受けると考え、4つのエレメントに分類しました。
16〜17世紀の西洋で、病気を治す代表的な薬はハーブでした。ここで4つのエレメントを通じ、占星術とハーブ(アロマテラピー)が関係してきます。
津田:占星術とアロマテラピーにそんな深い歴史があったとは驚きです。4つのエレメントに対応するハーブはありますか。
鏡:火なら、熱感のあるジンジャー、地はナス科、風はリンデン、水はキャベツなど水分を多く含むものといったように、対応するハーブや植物があります。
個性を強化したいときは、自分のエレメントに該当するハーブを使い、個性が過剰な場合は、逆のエレメントを参考にします。例えば、身体が熱くほてるときには、それを打ち消す水のエレメントに該当するハーブを処方していました。
津田:精油をブレンドする場合、その基準は香りの嗜好性になります。新たな精油の選び方を模索していたとき、エレメントに出会いました。エレメントごとに適応する様々なハーブが分類されていますね。
鏡:エレメントのハーブの分類は様々ですが、スコット・カニンガムの著書は有名です。彼は各エレメントの星のイメージから、多くのハーブを紹介しています。
津田:分類されたハーブ(アロマ)を調べると、エレメントごとに香りの共通点があり驚きました。エレメントのイメージから香りを具体的に組み立ててみたので、先生に感想を伺いたいと思います。
「火」は華やかに香り立ち、鮮やかに消えるシトラスを主役に温度感のある香りにし、「地」は頑なで神経質な性質を癒すラベンダーとアーシーな素材が香るように。「風」はそよぐ木々を感じさせる、揮発性が良い薬草の香りで構成し、「水」は甘さと辛さ(からさ)を兼ね備え、じんわり浸透する香りにしました。
鏡:4つのエレメントを香りで表現するとはおもしろいですね。エレメントごとに、香りの個性がしっかり感じられます。占星術と香りのマリアージュには、ワインのようなおもしろさがありますね。
津田:ありがとうございます。自分のエレメントの香りをお守りにしたり、他のエレメントの香りでいつもと違う自分を演出することも楽しめると思います。
香りを一種の魔法にするのですね。香りでエレメントが持つ力を召喚できそうですね。ほかにも曜日に合わせてはどうでしょう。占星術では日曜日は太陽、月曜日は月と、それぞれの曜日と星が対応しています。曜日に合わせた星が属するエレメントの香りをつけることで、星の力も召喚できそうですね。
津田:生活や心を豊かにする香りの新しい選び方として、ぜひエレメントを参考にしてほしいと思います。
鏡リュウジ
心理占星術研究家・翻訳家。占星術への心理学的アプローチを日本に紹介し、従来の占星術のイメージを大きく塗り替え、幅広い世代から支持される占星術の第一人者。大学でも教鞭をとるなど、アカデミックな観点からも占星術を紹介し、自ら翻訳も行う。