幼い頃、外で遊んで体のどこかに傷を作っては、よく救急箱のお世話になりました。
とはいっても、私の家の救急箱は形なりに存在してはあるももの、実際の中身は貧相。
風邪薬は絶対に常備できておらず、風邪を引いても薬を飲んで治した記憶があまりありません。
絆創膏もなぜか大きいものから貼りたがってしまうため、いつも小さなサイズしか残っていなくて、
食あたりの時に飲む赤黒い球の薬は、食あたりの症状になった試しがないので手つかずのまま。
包帯を巻くようなケガなら、まず病院に行く必要があるだろうと親は思っていたのか、家で包帯を巻いてもらえる
場面がなく、これらも入っていません。
親戚のおばちゃんがいつもくれる湿布ばかりが重なって入っていました。
それでもなぜか救急箱を見るのが好きで、用もないのに救急箱の中身をいじったり整理したり。
同じように、保健室の先生がケガした子を手当てしている様子を見たくて、友達がケガをしたら一目散に
自分が付き添って保健室に連れて行っていたような記憶もあります。
これだけ聞くと変な子供ですが、救急箱や保健室にしかない香りがあって、それが食べ物や化粧品のような"誘う"
香しさではなく、潔白でいつも変化のないその香りと相まって、手当てをする人やアイテムの格好良さが重なり、
不思議な緊張感と臨時感に少し興奮を覚えていました。
今思うとその香りの主は、ユーカリの主成分1,8シネオ―ル(1,8‐Cineole)。
ユーカリと言えばシネオールというほど、別名はユーカリプトール(Eucalyptol)とも呼ばれます。
ユーカリに限らずティートゥリーやカユプテなど、含有量は違えどフトモモ科全般に共通する香気成分です。
ラベンダーの特徴成分、酢酸リナリルが「安静」だとするなら、
この1,8シネオールは「撃退」と言えるのではないでしょうか。
ハーブ(自然植物)が持っている香気成分の中でも、非常に抗菌性が高く有用として取り上げられてきた、
いわば"アロマテラピー"に期待するところの作用を担っているような成分です。
フレグランスでは、ユーカリは薬品様に感じることからも、あまり香水や香商品には使用されません。
どうしても洗浄剤や抗菌性を求める製品に活用されるため、そういったものを連想してしまうということと、
調香に用いるには、清潔感が強すぎて色気は皆無。美しく魅了する香りにはなり辛いとされているからです。
ただ、口腔剤類、ハウスボールド製品、ガムやのど飴などの菓子フレーバーには多々使用されます。
やはり"魅せる"目的ではなく、"ケアする"使用目的が強いんでしょう。
今は植物全般の香りが好きで、フレグランス・アロマの持つ魅力に日々感動しています。
子供のころ救急箱が好きだったその心理は、大人になった今自己分析してもよくわかりませんが、
ただ、もし旅行に行くときエッセンシャルオイル(精油)を一つ持って行けるとしたら、どれを持って行く?と聞かれたら、
私はやっぱりユーカリを選ぶと思います。
●ユーカリの種類
一口にユーカリと言ってもその品種は様々あります。いずれも100%天然のもの。
エッセンシャルオイルとして流通している物の中だと↓↓↓
・ユーカリ・グロブルス(Eucalyptus globulus)
エッセンシャルオイルのユーカリとして代表的な品種の一つ。1,8シネオ―ルの含有が非常に高く、
様々な洗浄料に使用されます。香りは潔くシャープでクリア。少し薬品的な香りの鋭さが特徴です。
・ユーカリ・ラディア―タ(Eucalyptus radiata)
グロブルスより、香りは比較的甘くウッディー。ナチュラルな植物っぽい香りがあり穏やかな印象。
グロブルスの強い香りが苦手という方におすすめ。
・ユーカリ・シトリオドラ(Eucalyptus citriodora)
別名レモンユーカリ。シトラス調の香りを併せ持つユーカリで、レモングラスやシトロネラ系統の香りです。
シトロネラールが高含有なことからも、虫が自然と除ける香りとして、古くから研究されています。
●ユーカリの使用方法
お部屋のクリーンアップ。こもった空気をリフレッシュしたい時の環境芳香浴に。
香りが苦手な方はオレンジスイートやグレープフルーツなど、柑橘系とブレンドすると嗅ぎやすくなります。
またラベンダーやミントと併せると、ハーブの持つ清涼で気持ちの良い香りになるのでおすすめです。