アロマテラピー素材をひとくくりにしたとき、その中でも他に類を見ない香りがいくつかあります。
グリーン香気の代表格ガルバナム(Ferula galbaniflua)もその一つです。
効能効果は別として、どのようにしてこの香りを使うのか躊躇ってしまうほど、
変換不可能な「緑」や「茎」をそのまま香りにしたような印象です。
ウイキョウの一種で、その根茎から出る樹脂を原料として採られます。
様々ある樹脂原精油は、例えばフランキンセンスやエレミのようなシャープな松脂様なもの、
ベンゾインやミルラのような甘く濃く煮詰めたチャツネ感があるものなどが想像しやすい中、
ガルバナムに関しては、樹脂を想起するより、ステム感が前面に出ていて、どちらかというと
野菜が持つ印象に近いと感じがします。フキ?ごぼう?はたまた花のシキミア?
共通することは筋の通りがはっきりしている、硬質な緑の香りが特徴です。
また香気成分ピラジン類を含有しているため、少しの辛みと茶葉感を有します。
AEAJ(日本アロマ環境協会)の専科ブレンドアロマデザイナーの対象精油にグリーンノート
素材として、このガルバナムとバイオレットリーフが出てきます。
二つを比較すると、バイオレットリーフは瑞々しくキューカンバ調のグリーンと言え、
ガルバナムはウイキョウだということも大きく影響してか、スパイシー調なグリーンとなります。
この力強く、筋が通ったグリーンの香りをその配合に組み込み名香となったものが、
某有名トップメゾンのNo.19。
私はこの香りが大好きです。なぜ好きかと理由は様々ですが、とにかく配合組成が素晴らしいこと。
当時女性用のフレグランスとして、画期的だったであろう、硬い音がなるほどクールで凛々しく、
涼やかなグリーンの香り。強い女性(精神が)を表現しているが、決して野性的でなく洗練されています。
No.5で女性らしさを表現したとするのであれば、No.19は女性とて、いや女性だからこそこうあるべきだ。
ということを示しているようなものに表現されています。
対極にある「パウダリー」と「フレッシュ」の完璧なマリアージュ。
ケバさのないジャスミンを宿し、限りなく透明なミュゲやローズ、クマリンや白いムスクの香りが追い打ちをかけます。
どこか気高く、決して媚びないアーシーなベースノート。
でもちゃんと品格と色気を持った、一歩先の「女」を匂わせています。
香り立ちに、終始一貫してガルバナムがしっかり作用しているわけです。
ガルバナムの青みは、いっけん絡みづらくもとれますが、その素材を持ってしか再現できない最高傑作、No.19。
19はココの誕生日8月19日にちなんで付けられたそう。
彼女の姿勢と展望、フィロソフィーそのものを香りに置き換えたとき、
ガルバナムは必要不可欠だったわけです。
使用頻度は少ないかもしれませんが、それじゃないと替えが利かないものがあるって、
とても素敵なことだと思いませんか?
●ガルバナムの注意点
ガルバナムの香りのパワーは非常に強く、100%の状態ではブレンドに適していません。
アルコールをはじめとする溶剤で、5~10%に希釈したガルバナムを使用ましょう。
もしくはブレンド全体の5%を超えると同じくtoo much Greenになってしまいます。
少量の配合からお試しください。
また私自身はこの香りの強さから、ずっとこの香りを嗅いでいると少し頭が重くなったりすることがあります。
そんな時は無理にご使用頂かないようおすすめします。
●ガルバナムのブレンド
フローラル素材との相性が良いと言えます。フレッシュなで生々しい植物の息吹を吹き込んでくれます。
香り全体がイキイキするのでぜひ試してみてください。