バニラがカスタード、雛色を想起させ、トンカビーンスは透明や粉糖のような白色、
対比するなら、ベンゾインは飴色でメープル様の香ばしい微睡む色を持ちます。
ベンゾインはラオスやベトナム、タイを主産地とするシャムタイプ(Styrax tonkinensis)と、
インドネシア周辺で採られるスマトラタイプ(Styrax benzoin/Styrax paralleloneurum)とが存在します。
シャムタイプの方が甘くフレグランス用途に多用され、スマトラタイプはよりスパイシーで香りが強くオリエンタル調の補強に使われます。
学名になっている「Styrax/スチラックス」という名の、同じく樹脂原料の香料が存在します。
よりスチレン特有の香りで、レジノイド様。またシナミックな香りを放ちます。
スチラックスはマンサク科(Liquidamber~)で、なぜこのエゴノキ科のベンゾインの学名にStyraxが当てがわれたのか、
理由は定かではありません。
香りは、糖を加熱しメーラード反応が起き出したときのようなカラメル感があり。バニラより茶色くダークラム様。
焼き菓子調の雰囲気が漂います。樹脂にしてはえらく糖分を感じる香りで、杏仁(アーモンド)の香りもします。
実際アプリコットカーネルの中にはベンズアルデヒドや安息香酸を含み、これらの香気成分の名前の由来に
なっているほどですから面白いものです。もちろんこれらの香気成分はベンゾインを組成する香りでもあります。
ベンゾインの木から採られたのが先か、アーモンドや杏仁から発見されたのが先か分かりませんが、
全く違う種の、全く違う植物の部位から、共通する香りが見出される面白さには、植物の神秘性を感じます。
最近よくあることなのですが、複数のブレンドを同時に試作をしていると、
AというブレンドとBというブレンド、ぞれぞれのコンセプトに合わせた香調にしているんですが、
意外とそれぞれを研ぎ澄ませていくと、そっくりそのままAとBのブレンドをテレコにした方が
イメージにフィットしていたりすることがあります。
ブレンドの面白いところで、単品精油それぞれはイメージに沿って選定しているんですが、
組み合わせによる相互反応で違った印象の香りになります。
それが、別のブレンドのイメージに合っていたりなんかして。
まだまだ予測がつかないケミカルリアクションがあるものです。
●おすすめブレンド
ベンゾイン:1、ホーリーフ:1、オレンジスイート:3
の割合でほっこりとする甘い香りの空間作りが楽しめます。
また喉がイガイガしやすい季節の芳香浴には、フランキンセンス、ヒノキ、ベンゾインのブレンドがおすすめです。
手作りハンドクリームやバームにローズAbs.、サンダルウッド、ベンゾインを少し香らせて作れば、
しっとりとお肌も健やかに保てます。
またベンゾインは保留生が高いので熱にも強い香気です。
せっけんやキャンドルづくりに、香りの保留材としても頼もしいアロマ素材になります。
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