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ベチバー

2017.12.18 TEXT by Keiichiro Tsuda (Perfumer)
ベチバー

"お香"という素材がどこかオリエンタルなもの、アジア風なものと思うのはきっと、
パチュリーやサンダルウッドのように火の熱に耐えうる香りの原料に、アジア原産のものが多いからでしょうか。
それらインセンス素材として欠かせることのできない1つに、ベチバー(Vetiveria zizanoides)があります。
精油原料に多く見られるイネ科の植物なのですが、ベチバー精油の抽出部位は根です。

ベチバーのことを説明している書籍・文献を見ると、国内の文献では「肌の作用」(皮膚の結合組織の強化、
抗老化、たるみ改善などなど)や、「消臭効果」があると言われる成分を含有しているなど、日本人らしい効能効果を
推奨するものが目立つ一方、欧米をはじめとする洋書文献にはもっと、香水原料としての重要な役割、またヒーリング素材として
非常に官能を重視した切り口で描かれているものが多く見受けます。
もちろん嗜好性の違いなどもあるのですが、日本人らしいというかなんというか、食べ物同様、おいしいと感じづらいものは、
いかにその食べ物の栄養スペックが高いことや、特徴成分があることを探し、謳います。
ベチバーの香りはあまり嗅ぎやすかったり、単体では芳香だと思う人が少ないのかもしれません。
どちらの使い方が良い悪いではないのですが、このベチバーの独特な香りに正面から向き合ってもらいたいものです。


ベチバーの香りは暗く、湿り気と少しの焦げ感、ウッディーでアーシー、濡れた土壌の香りがします。
シトラスの持つ明るさや、花の持つ華やかさ、薬草類にある清々しさなどからは程遠い、正直少し陰気な香りです。
この陰気な香りと向き合うことは、自己と向き合う時に非常に貴い存在になります。
上記の他素材の香りは、それぞれどこか外の世界に向けて能動性を駆り立てるものだったりします。
一方このベチバーは、パーソナルで深層心理を顧みる手伝いをしてくれる香りです。
またこの上なく"土"や"大地"を感じます。地に足を付け、根を張り、現実的な思考と立ち位置を示してくれる。
そんな香りだと言われています。

前回コラム「フランキンセンス」と同様、この香りをぜひこの時期(年末)に嗅いで、感じてみてください。
本当の意味で休まるとき、また立ち返る瞬間には、日ごろ多用している柑橘やハーバルな香りとは違い、
この"陰"の香りで自己に向き合ってみるのもいいでしょう。
外部からの刺激や概念だけにとらわれると、本来の自分からかい離して、元の場所がわからなくなるとこがあると思います。
ニュートラルな自分、本来の願望、過去の傷、真実への直視。
気分転換のための、リフレッシュ&リラックスもいいですが、
この時期、一年を振り返り、本来の自分に立ち返りしっかりと地に足を付け、考えてみる。
それはきっと新しい未来を見据えるために必要な準備になるはず。
 


香水でも、ベチバーはフワっとしたミドルまでの香りを、しっかり肌に定着させてくれ、
また心理に訴えかける雰囲気を付与してくれる、そんな素材です。

 
 


●おすすめブレンド
香水のシプレ好調には欠かせない素材でもあります。
柑橘をトップのメインに、ホワイトフローラル(ジャスミン、ネロリ、チュベローズetc)を少々、
ベチバーをベースに持ってくると、これぞシプレの骨組みです。
シトラスとホワイトフローラルの浮ついた陽気さを、真の格調の高さ、大人っぽさ、更なる高級感を
出す役割を担っています。
エッセンシャルオイルのブレンドでも是非お試しください。
※ベチバーの代わりにパチュリやシダーウッドなどでも代用できます。


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