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アロマブレンドラボラトリー エッセンシャルオイル

イランイラン

2017.03.15 TEXT by Keiichiro Tsuda (Perfumer)
イランイラン

ある人に聞くと、この香りは「ハムの匂いみたいだ」という人がいました。
「まだ青いバナナの匂いがする」、「歯医者さんで口の中にゴム手袋をした指を入れられたときの匂い」という人もいました。
これほど一つの香りに違った印象を持たれる花も珍しいと感じます。

タガログ語で「花の中の花」の意を持つイランイラン(Cananga odorata)は、その花の形状も特徴的で、
輝かしいレモン色の花びらをひらひら、クルクルと巻くように垂れ咲きます。
花精油の多くは、香りが繊細なために溶剤抽出法で採られるアブソリュートが多い中、イランイランは水蒸気蒸留法で採油されます。
香気成分には果実らしいエステル類、花々しいアルコール類、ねっとりと分厚いセスキテルペン類が複雑に組成していて、
単一の花から豊富な香気成分と水蒸気蒸留に耐えられる力強い香りを含有する珍しい素材です。

蒸留する際には分断して採油されます。蒸留開始から数時間で採られる精油は香気が軽やかで品がある「スーパーエクストラ」や
「エクストラ」と呼ばれるもの、次に「ファースト」「セカンド」「サード」とどんどん強く、ファッティ―(油っぽい)で
エグみも強いものが採られます。もちろん「エクストラ」と品格付けられた精油は、芳香で希少性も高い為、高価で取り扱われますが、
「セカンド」や「サード」が粗悪なものということでもありません。力強さと保留性から、キャンドルやソープの
香りの底力としてバルサム素材(ベンゾイン、ミルラなどの樹脂系)と同様に重宝されます。

華やかさが、化粧品や香水には欠かせないマテリアルとして、様々なフレグランス商品に活用されます。
イランイランは官能的で催淫性を持つ香りとしても有名。女性を情熱的かつ開放的にし、男性を優しく受動的にします。
アロマテラピーの世界ではこのセクシーさやエロティックな表現をあまり語りませんが、
イランイランのとろみのある官能的な香りは、潔く誠実な色気を放ち、美しく格好の良いものだと感じるのです。


最初に「ブルーチーズ」という食品に出会ったとき、意味が分かりませんでした。
どうしてカビの生えた、強烈に臭い食品を人は好んで食べるのか...
でも今は大好きです。

イランイランも同様、複雑でエキゾチックで少し「クセ」のある香りを、歳を重ねるごとに、好きになっていることを実感します。

●イランイランの注意点
柑橘系、ハーブ系、ウッディー系など比較的何ともブレンドの相性はいいのですが、配合量に注意してください。
ブレンドすると想像以上に全体がイランイラン寄りに持っていかれるため、意識して少量配合から試すことが鉄則です。
またイランイランの香りを嗅ぎ過ぎると、頭が重くなったり、香りの強さから気分が悪くなることがあります。
そんな時は無理に香りを嗅がず、適宜空気の入替えや鼻を休ませるようにしましょう。


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